令和3年3月号の所沢医師会報が出版されました。トップページには昭和55年に所沢市で発覚した富士見産婦人科事件の真実を明かす新見毅先生の手記が掲載されています。手に汗握るサスペンスのようであり、朝日新聞のスクープに至る新見先生と荻野先生の正義の行動には感動を覚えました。当時の医師会の執行部の先生方のご努力と歴史の事実を教えてくださった新見先生の勇気あるご投稿に最大の敬意を表したいと思います。

首都圏では3月7日の緊急事態宣言解除が延長となりましたが、新規感染者数は下げ止まり、一部では増加傾向すら示しています。三密回避のアナウンスだけではやはり限界があるのでしょう。ワクチン接種への期待がいよいよ高まっています。本日付けの新聞(3月13日)では6月までに1億回分(4000万人分)が確保されたと報道され、安堵しています。ワクチン接種の方法ですが、赤津先生が1月度の定例の理事会でつぶやいたように、サテライト型接種施設を増やしてインフルエンザ・ワクチンのように個別接種を増やす方が、高齢者や基礎疾患のある地域住民への接種には好ましいのではないかと考えます。

さて、筆者はリウマチ専門医です。近年、関節リウマチの治療は、tumor necrosis factor、IL-6受容体、T細胞共刺激分子を抑制する抗体製剤(生物学的製剤)が開発され、多大な効果をもたらしてきました。一方でこうした薬剤は免疫反応を抑制する為、ワクチン接種の有効性が疑問視されてきました。筆者らはTNF阻害療法を受けている患者がインフルエンザワクチンの接種を受けても健常人と同等の抗体価が得られる事を見出し(Kubota T et al. Modern Rheumatology 2007;17:531-33)、積極的なワクチン接種を推奨してきました。今回の新型コロナワクチン接種が免疫抑制を受けた患者に対しても有効性が得られるのか、これからの臨床研究の成果に期待したいと思います。

ワクチン接種によって1日も早く新型コロナ感染症が収束し、世界の人々が自由に行き来できる時が来ることを期待したいと思います。

 

ひろせクリニック 廣瀬 恒